【2026年改正】成年後見制度はどう変わる?後見・保佐・補助の一本化をわかりやすく解説


※この記事は2026年7月時点の法令・公表資料に基づいて作成しています。

認知症や知的障害、精神障害などにより、自分だけで契約や財産管理を行うことが難しくなった方を支援する「成年後見制度」。

この成年後見制度を大きく見直す改正法が、2026年6月24日に公布されました。

今回の改正では、現在の「後見・保佐・補助」という3つの区分が、原則として「補助」に一本化されます。

ただし、単に名称を一つにするだけではありません。

制度の考え方そのものが、

「判断能力の程度に応じて、一律に大きな権限を与える制度」

から、

「本人が必要とする支援だけを、必要な範囲で利用する制度」

へ変わります。

今回は、成年後見制度がどのように変わるのかを、できるだけわかりやすく解説します。

現在の成年後見制度は3種類

現在の法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、次の3種類に分かれています。

・補助
判断能力が不十分な方を対象とする制度

・保佐
判断能力が著しく不十分な方を対象とする制度

・後見
判断能力を欠く状態が通常である方を対象とする制度

一般的には、判断能力の低下が大きくなるほど、支援する人の権限も広くなります。

特に成年後見人には、本人に代わって契約を行う広い代理権や、本人が行った契約を取り消す権限が認められています。

なぜ制度が改正されるの?

現在の制度については、以前からいくつかの問題が指摘されていました。

例えば、遺産分割を行うために成年後見制度を利用した場合、遺産分割が終了しても、本人の判断能力が回復しない限り制度を終了できないことがあります。

また、成年後見人の権限が広いため、本人が自分で判断できることまで、後見人が代わりに決めてしまう場合もあります。

さらに、本人と後見人との関係が悪くなったり、本人の生活状況が変わったりしても、後見人の交代が円滑に進まないケースも指摘されていました。

厚生労働省の資料でも、現在の制度について、「利用目的が解決しても終了しにくいこと」「本人の自己決定が必要以上に制限される場合があること」などが課題として挙げられています。

改正後は「補助」に一本化

改正後は、成人を対象とする「後見」と「保佐」が廃止され、制度が「補助」に一本化されます。

ただし、すべての補助人が同じ権限を持つわけではありません。

家庭裁判所が、本人の状態や生活上の必要性を確認したうえで、補助人に与える権限を個別に決めます。

つまり、判断能力の程度だけで制度を決めるのではなく、

「本人が何に困っているのか」

「どの行為について支援が必要なのか」

を中心に制度を組み立てることになります。

補助人にはどのような権限が与えられる?

改正後の支援は、大きく分けて次の3つです。

1.特定の行為を代理してもらう

家庭裁判所が、補助人に特定の代理権を与えます。

例えば、

・遺産分割協議を行う
・不動産を売却する
・介護施設との入所契約を結ぶ
・預貯金を管理する

といった行為です。

現在の成年後見人のように、当然に広い代理権が与えられるのではありません。

「この手続についてのみ代理する」という形で、必要な範囲が指定されます。

2.重要な契約に補助人の同意を必要とする

借入れ、不動産の売買、遺産分割、相続放棄など、重要な財産上の行為について、補助人の同意を必要とすることができます。

本人が補助人の同意を得ずに契約した場合は、その契約を取り消せる可能性があります。

一方で、食料品や日用品の購入など、日常生活に関する行為は原則として取り消しの対象になりません。

3.特に強い保護が必要な場合は「特定補助人」を付ける

本人が判断能力を欠く状態にあり、より強い財産保護が必要な場合には、「特定補助人」を付けることができます。

特定補助人は、一定の重要な財産行為を取り消したり、本人の財産を保存したりする権限を持ちます。

ただし、特定補助人であっても、現在の成年後見人のような包括的な代理権が自動的に与えられるわけではありません。

代理権が必要な場合には、対象となる行為を個別に定めます。

必要がなくなれば制度を終了しやすくなる

今回の改正で特に重要なのが、制度の終了に関する変更です。

現在は、本人の判断能力が回復しなければ、成年後見制度を終了することが難しい場合があります。

改正後は、判断能力が回復していなくても、家庭裁判所が「その支援はもう必要ない」と判断すれば、代理権や取消権などを取り消すことができます。

例えば、

「遺産分割協議を行うために補助人を付ける」

「遺産分割が終了する」

「ほかに支援が必要な手続がなければ制度を終了する」

という利用がしやすくなります。

制度を一度利用したら長期間続けなければならない、という問題を改善するための見直しです。

本人の意思がより重視される

改正後は、補助人が本人の意思を確認し、尊重することがより明確に求められます。

補助人は、本人に必要な情報を伝え、本人の話を聴き、本人がどのような生活を望んでいるのかを確認しながら職務を行います。

「本人は判断できないから、家族や補助人だけで決める」

のではなく、

「本人が決められることは、できる限り本人に決めてもらう」

ことが制度の基本になります。

現在利用中の人は、すぐに何かする必要がある?

改正法はすでに公布されていますが、成年後見制度に関する改正部分は、まだ施行されていません。

施行日は、2026年6月24日の公布日から2年6か月以内に、政令で定められる予定です。

そのため、現時点では従来の「後見・保佐・補助」の制度が引き続き適用されます。

現在成年後見制度を利用している方についても、公布されたからといって、直ちに制度や後見人の権限が変わるわけではありません。

今後、施行日や経過措置、家庭裁判所での具体的な手続などが順次明らかになる予定です。

改正後は「何を支援してほしいか」が重要

改正後の成年後見制度では、単に本人の診断名や判断能力の程度を確認するだけでは足りません。

・預貯金の管理だけを依頼したい
・遺産分割だけを代理してほしい
・不動産の売却を支援してほしい
・悪質商法による契約を取り消せるようにしたい
・施設入所や介護サービスの契約を任せたい

など、本人が具体的にどのような支援を必要としているのかを整理することが重要になります。

制度を利用する前に、本人の希望、家族関係、財産状況、今後予定されている手続などを確認しておく必要があります。

まとめ

今回の改正を一言で表すと、

「大きな権限を一括して与える制度」から、
「必要な権限を必要な範囲だけ与える制度」へ変わる

ということです。

主な変更点は、次のとおりです。

・後見、保佐、補助を「補助」に一本化
・補助人の権限を必要な行為に限定
・必要がなくなれば制度を終了しやすくする
・本人の意思や希望をより重視する
・本人の状況に合わせて支援内容を変更しやすくする

成年後見制度を利用するかどうかは、ご本人やご家族の生活、財産、今後予定されている手続によって異なります。

また、判断能力が十分にある段階では、任意後見契約、財産管理委任契約、遺言書など、ほかの方法を選べる場合もあります。

ICY行政書士事務所では、成年後見制度や任意後見、相続手続、遺言書など、将来の財産管理に関するご相談を承っています。

「親の認知症が進み、預金を動かせない」
「相続手続を進めたいが、相続人の判断能力に不安がある」
「自分が元気なうちに将来の財産管理を決めておきたい」

といった場合は、状況が複雑になる前に専門家へご相談ください。

※本記事は一般的な制度の説明を目的としています。個別の案件については、本人の判断能力、財産状況、家族関係などによって必要な手続が異なります。また、裁判所に提出する書類の作成や代理については、弁護士または司法書士への相談が必要となる場合があります。

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