成年後見中の親が亡くなったら
親の成年後見人を務めている方からは、「亡くなった後も後見人として預金を動かしてよいのか」「家庭裁判所へ何を提出するのか」「財産は誰に渡すのか」という疑問が多く見られます。成年後見は、判断能力が十分でない本人を生前に支援する制度です。本人が亡くなると後見は終了しますが、それまで管理していた財産を整理し、相続人などへ引き継ぐ事務は残ります。
死亡した時点で後見は終了する
成年被後見人である親が亡くなると、成年後見人の権限はその時点で原則としてなくなります。家庭裁判所の終了決定を待って終わる制度ではありません。そのため、死亡後も「後見人として」自由に預金を引き出したり、契約を解約したりすることはできません。
まず、後見を監督していた家庭裁判所へ速やかに連絡し、死亡の記載がある戸籍や死亡診断書の写しなど、指定された資料を提出します。裁判所ごとに連絡票や終了報告書の様式、提出方法が異なるため、事件番号が分かる審判書や以前の報告書を手元に置いて確認しましょう。
弁護士、司法書士などの専門職が後見人だった場合、家族が後見人の終了報告を代わりに行うわけではありません。家族は専門職へ死亡を知らせ、遺言書の有無、相続人を確認できる戸籍、財産を受け取る人の連絡先などを、求められた範囲で準備します。
裁判所への報告と終了登記を行う
家族が成年後見人だった場合は、家庭裁判所への連絡とは別に、成年後見の「終了登記」を申請します。これは、法務局の後見登記の記録に、本人の死亡によって後見が終了したことを反映させる手続です。申請先は東京法務局の後見登録課で、窓口または郵送による方法があります。
現在、終了登記の申請自体に手数料はかかりません。申請書のほか、本人の死亡を確認できる戸籍等を求められることがあります。使用できる書類や最新の提出方法は、東京法務局の案内で確認してください。
裁判所へは、通常、終了報告書、死亡時点の財産目録、収支の資料などを提出します。通帳、取引明細、領収書、施設や病院との契約書、保険・証券・不動産関係の資料は、引継ぎが済むまでまとめて保管しましょう。
2か月以内に財産を引き継ぐ
元成年後見人は、原則として後見の終了から2か月以内に、それまでの収入と支出を計算し、管理していた財産を相続人などへ引き渡します。期限内の整理が難しい事情があれば、放置せず、監督していた家庭裁判所へ早めに相談します。
まず遺言書と遺言執行者の有無を確認します。遺言執行者がいれば、その人への引継ぎが必要になることがあります。遺言書がなければ、戸籍を集めて相続人を確認します。相続人が複数いるときは、一人へ安易に全財産を渡さず、全員の了解を確認するか、相続人から指定された代表者へ引き継ぎ、受領書を受け取りましょう。
引継ぎの対象には、現金や預貯金だけでなく、通帳、印鑑、権利証類、保険証券、鍵、未払い・未収金が分かる資料、後見中の収支記録なども含まれます。元後見人自身が相続人である場合も、後見財産と自分の財産を混ぜず、引継日と内容を記録することが大切です。
預金や葬儀は独断で処理しない
本人の死亡後、病院代、施設費、家賃などの支払いは、原則として相続人が対応する問題です。元後見人が、後見人名義の届出印やカードを使って故人の口座から支払うことは避けましょう。
法律上、保存に必要な行為など、限られた死後事務を元後見人が行える場合はありますが、条件があり、内容によって家庭裁判所の許可も必要です。火葬・埋葬に関する契約、施設に残った家財の保管、公共料金の解約などを急ぐ場合は、先に監督していた家庭裁判所へ確認してください。
元後見人には、後見人という立場だけで葬儀を主宰する義務や権限が当然に生じるわけではありません。家族として葬儀費用を支払う場合も、後見事務とは区別して領収書を残します。
相続人が分からない、全員が相続放棄を考えている、財産の引渡し先をめぐって対立があるといった場合は、家庭裁判所や弁護士へ相談しましょう。不動産の相続登記は司法書士、相続税の判断は税理士への相談が適切です。
元気なうちに、後見事件の番号、後見人の連絡先、最新の財産目録、遺言書の保管場所を家族で確認しておくと、終了後の引継ぎが進めやすくなります。アイシー大阪本町相続サポートは、大阪市中央区・本町駅徒歩1分で、戸籍収集や相続人調査、相続関係書類の整理など、相続手続の相談に対応しています。

