親が亡くなった後の賃貸退去

賃貸住宅で暮らしていた親が亡くなり、管理会社から退去について連絡を受けたものの、「すぐに部屋を片付けてよいのか」「家賃はいつまでかかるのか」「敷金は誰が受け取るのか」と迷う方は少なくありません。

急いで明け渡したいと思っても、室内の家財は相続財産です。相続放棄を考える可能性がある場合は、処分や支払いを始める前に確認が必要です。

死亡しても契約は自動で終わらない

民間の賃貸住宅では、借主が亡くなっただけで賃貸借契約が自動的に終了するわけではありません。原則として、借主の契約上の地位や未払い家賃などの義務は相続人に引き継がれます。

まず、賃貸借契約書、家賃の引落しが分かる通帳、管理会社や大家の連絡先、鍵、火災保険や家賃保証会社の書類を探します。そのうえで管理会社などへ死亡を伝え、解約方法、退去日、必要書類、立会いの有無を確認しましょう。

必要書類は契約先によって異なりますが、死亡の事実が分かる書類、手続をする方の本人確認書類、亡くなった方との関係が分かる戸籍、相続人を確認できる資料などを求められることがあります。相続人が複数いる場合は、代表者だけで解約できるかも事前に確認が必要です。

片付けから明渡しまでの流れ

管理会社へ連絡した後は、室内の状況を写真や動画で残し、郵便物、通帳、印鑑、契約書、権利証、貴金属、思い出の品などを分けて確認します。処分する物もすぐに捨てず、相続人間で扱いを決めてから進める方が安全です。

退去日が決まったら、電気、ガス、水道、インターネット、新聞などの停止日を調整します。大型ごみや家電の処分は自治体のルールを確認し、遺品整理業者へ依頼する場合は、作業範囲と追加料金を含む見積書を取りましょう。

最後に、残した物がないか確認し、立会い、鍵の返却、家賃や原状回復費用の精算へ進みます。家賃がいつまで発生するかは、解約予告期間や明渡し日など契約内容によって異なります。口頭だけでなく、書面やメールで確認しておくと安心です。

敷金と原状回復費用を確認する

敷金は、契約が終了して部屋を明け渡した後、未払い家賃や正当な原状回復費用などを差し引いた残額が返還されます。返還される敷金は相続財産となるため、受取人や振込先を相続人間で確認する必要があります。

原状回復は、入居した当時の新品の状態へ戻すことではありません。通常の生活で生じた傷みや時間の経過による劣化は、原則として貸主側の負担です。一方、故意や過失、通常の使い方を超えたことによる損傷は、借主側の負担となることがあります。有効な特約がある場合は、扱いが変わることもあります。

請求を受けたときは、契約書の特約、室内写真、修繕箇所、単価、経過年数が分かる明細を確認しましょう。内容に納得できない場合や金額で対立した場合は、消費生活センターや弁護士などへの相談を検討します。

相続放棄を考えるなら先に相談する

借金や滞納家賃があり、相続放棄を検討している場合は、家財を売る、形見分けをする、故人のお金で費用を支払うといった行為を慎重に判断しなければなりません。内容によっては、相続を承認したと扱われる可能性があるためです。

相続放棄は原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。部屋をそのままにすればよいとも限らないため、管理会社から退去や支払いを求められても、その場で約束せず、早めに弁護士へ相談しましょう。

一人暮らしの方は、元気なうちに賃貸借契約書の保管場所、管理会社、家賃の支払方法、残したい家財と処分してよい物を整理しておくと、家族の負担を減らせます。頼れる相続人がいない場合は、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」や死後事務委任契約を利用できるか、管理会社や専門家へ確認する方法もあります。

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