遺言書を法務局に預ける方法

「遺言書を書いても、自宅に置いておいて本当に見つけてもらえるのだろうか」「親族と疎遠なので、亡くなった後に遺言書が発見されないのが心配」という方もいるでしょう。
特に、配偶者や子どもがいない方が、親しい友人や特定の親族などに財産を残したい場合、遺言書を作るだけでなく、「亡くなった後にきちんと見つけてもらえる状態にしておくこと」も重要です。
その方法の一つが、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」です。
自分で書いた遺言書を法務局で保管できる
自筆証書遺言とは、自分で作成する遺言書です。原則として、遺言の本文、作成日付、氏名を本人が自書し、押印します。財産目録については、一定の要件を満たせばパソコンで作成したものや通帳のコピー、不動産の登記事項証明書などを利用することもできます。
自筆証書遺言は自宅で保管することもできますが、「どこに置いたか分からなくなった」「亡くなった後に誰にも発見されなかった」といった問題が生じる可能性があります。
自筆証書遺言書保管制度を利用すると、遺言書の原本などが法務局で管理されるため、紛失や第三者による破棄・隠匿などを防ぎやすくなります。また、法務局で保管されている遺言書については、相続開始後の家庭裁判所による検認が不要です。
配偶者や子どもがいない方にとって、「作った遺言書を誰が保管するか」という問題を解消する選択肢の一つになります。
保管申請は本人が法務局へ行う
遺言書を法務局へ預ける場合、行政書士や親族が本人の代わりに保管申請をすることはできません。遺言者本人が遺言書保管所へ出向いて手続を行います。
申請できる遺言書保管所は、遺言者の住所地、本籍地、または所有する不動産の所在地を基準として選ぶことができます。事前に予約を行い、本人が窓口で手続するのが基本です。
一般的には、自筆証書遺言書、保管申請書、本籍や戸籍の筆頭者が記載された住民票の写し、顔写真付きの本人確認書類、手数料を準備します。住民票の写しは作成後3か月以内のものが案内されており、保管申請の手数料は遺言書1通につき3,900円です。必要書類や取扱いは状況によって異なりますので、申請する遺言書保管所で最新の案内を確認しましょう。
法務局は遺言内容まで判断してくれない
ここは特に注意したいところです。
法務局へ預けたからといって、その遺言書の内容が法律上有効であることまで保証されるわけではありません。法務局では遺言書の形式面について確認しますが、「誰にどの財産を渡すべきか」「この内容で希望どおりの相続になるか」といった遺言内容の相談や審査は行いません。
例えば、「世話になった友人に財産を残したい」と考えていても、預貯金や不動産の指定が曖昧だったり、記載していない財産が残っていたりすると、死亡後の手続で問題になることがあります。
また、相続人の構成によっては遺留分への配慮が必要になる場合もあります。
そのため、保管制度を利用することと、遺言内容を適切に作成することは分けて考える必要があります。
遺言書の存在を知らせる仕組みもある
一人暮らしの方にとっては、「法務局に預けたことを誰も知らなかったらどうなるのか」という点も気になるところです。
自筆証書遺言書保管制度には、遺言者の死亡が確認された場合に、あらかじめ指定した人へ遺言書が保管されていることを知らせる「指定者通知」の仕組みがあります。現在は通知対象者を3名まで指定できます。
例えば、信頼している親族や友人、遺言執行を任せる予定の人などに遺言書の存在を知ってもらう準備が考えられます。
ただし、遺言書は主に財産の承継について定めるものです。葬儀、納骨、賃貸住宅の明渡し、家財の処分、公共料金の解約などを誰かに頼みたい場合は、死後事務委任契約など別の準備を検討する必要があります。
自筆証書遺言書保管制度は、自分で遺言書を作りたい方にとって便利な制度ですが、「とりあえず書いて法務局へ預ければ終わり」というものではありません。まず相続人と財産を整理し、自分が誰に何を残したいのかを明確にすることが重要です。
アイシー行政書士事務所では、戸籍収集や相続人調査、財産関係の整理、遺言書原案の作成支援など、相続手続の相談に対応しています。相続人間の争いや法的な交渉が必要な場合は弁護士、不動産登記は司法書士、税務判断や相続税申告は税理士への相談が適切となる場合があります。
大阪市中央区・本町駅徒歩3分。将来の相続や終活について気になることがあれば、元気なうちに一つずつ確認しておくことが大切です。

